理事長メッセージ

Originator Profile 技術研究組合 理事長 村井 純
(撮影:村田和聡)

情報技術(IT)の進歩は私たちの社会に様々な恩恵をもたらしました。2000 年に世界で 6%だったインターネットの普及率は、全人類の 70%以上に広がりました。インターネット、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などは社会に大きな利益をもたらしています。

一方で、偽・誤情報(いわゆるフェイクニュース)や誹謗中傷の拡散という新たな課題も生じています。ニュースの信頼性が損なわれるなど負の側面も目立ち、大きな社会問題となっています。デジタル広告の分野でも、耳目を集めることを目的とし、行き過ぎた「アテンション・エコノミー」の台頭で市場の健全性がゆがめられてきました。

技術が生み出した課題は、技術での解決を目指す。ニュースなどのコンテンツと広告の関係に課題を感じる人たちと共に、読者、メディア、広告業界のそれぞれを含めたステークホルダーに便益をもたらす技術を開発し、その標準を広めることが必要です。

そこで私たちは「オリジネーター・プロファイル(OP)」と呼ぶ新しい技術を提案します。デジタル化した符号でコンテンツ発信者の情報を開示する技術です。情報の発信者を識別可能にすることで、第三者認証済みのメディアとコンテンツを読者(エンドユーザ)が容易に見分けられる仕組みを確立し、偽・誤情報やアドフラウドなどの氾濫の抑止が期待できます。

OP 技術は、それ自体がメディアや広告主の峻別を行うものではありません。認証機関などが、OP 技術を活用して Web の世界をより健全で透明性の高いものとするための技術です。

私たちは OP 技術 の実用化に向け、2022 年 12 月に「Originator Profile 技術研究組合(OP CIP)」を設立しました。現在、OP CIP の下、国内企業を中心とした実証実験を行い、グローバルな普及を目指しています。

偽情報・誤情報・アドフラウドなど事態そのものは急速に深刻化し、民主主義の脅威として社会の安全を脅かすことが一層懸念されています。私たちはこうした事態に、様々なステークホルダーと連携して対処していくことが、未来への責任でもあると考えています。

インターネットは地球全体で一つの空間です。信頼や倫理を重んじ、質の高い文化を持つ日本に対する期待はとても大きく、日本が主導的な立場で、Web 技術の標準化団体である W3C(World Wide Web Consortium)に仕様を提案し、国際標準化に向けても積極的に取り組んでいきます。

世界中の Web コンテンツ業界、オンライン広告業界、ブラウザベンダーなどにも働きかけ、世界中の人々が安心して利用できる健全なインターネットの発展に貢献することを目指します。

私たち OP CIP の取り組みに、どうぞご期待ください。